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プリント基板品質考~④ スルーホール穴開け加工 基材・ドリル編 2014年05月03日
プリント基板品質考第四回目は前回に引き続きスルーホール品質の重要性と、知っておきたい基礎知識についてのお話しです。
前回は、 基板を構成する各材料の温度変化による影響の違いについて、 述べさせていただきましたが1つだけ補足させていただくと、FR-4、 CEM-3共に樹脂にはTg(ガラス転移温度)と言われる温度が有り、その温度( 一般材で130~140℃位)を超えて過熱されると、温度上昇による膨張係数が250~270ppm/℃とその温度以下の場合と比べ数倍も大きくなります、 フローやリフロー等部品実装時にはこれを大きく超える高温にさらされるている訳です、 部品を搭載して使用されるプリント基板はその宿命として、 実際の使用の前に大きな熱ストレスによって長期信頼性に悪影響が出る可能性の高いダメージを受けたうえで出荷 されるとも言えるのではないでしょうか。
さて、補足はこの位にして、今後は数回に分けて、 熱によるダメージの以外の品質に係わる要素についても考えてみようと思います。( プリント基板の最大のウィークポイントのプロセスや管理が出来ていないと、 通常の製品と比較し半分はおろか数%程度の耐久性しかない場合も有り得ますので、 とても重要な部分と考えます、その為、 複数回に分けてなるべく詳しくご紹介したいと考えています。)
今回は、樹脂にスルーホールの下穴をあける際の、 ドリル加工の出来映えについて材料とドリル管理を中心に考えたいと思います、 言うまでも無く、スルーホール下穴の理想的な形状はきれいな円筒形です。
しかしながら、これは言葉で言う程簡単では無く、 逆に言うと各メーカーの品質レベルが如実に表れる部分でも有ります、 ご存知の方も多いと思いますが、FR-4やCEM-3にはガラスクロス(ガラス繊維を縦糸・ 横糸として編んだ織布)が使われていますが、繊維の流れは縦横方向になっており、 回転するドリルの刃先と繊維の接触角度に関して、 浅い角度で接触する部分が構造的に有ります、そうした部分では繊維の切れがシャープにならず、掘り起こされたり、 バリが発生したりします。
このあたりの出来映えは、レベラー品以外であれば、 プリント基板の外観を詳しく見る事で比較的容易に確認する事が出来ます、 スルーホール内壁を(掘り起こしやバリは、構造的に基板の縦横方向ではなく、 斜め方向により顕著に凹凸として表れますのでこの部分を重点的に) 観察すると分かると思います。
その結果凹凸が余りに顕著な場合、 まず考えられるのは材料のガラスクロスの樹脂コーティングが十分で無い事です、 これは一部の海外メーカー材でよく見られますが、ガラスクロスを樹脂に含浸する際の開繊( 超音波等を使い繊維を広げて樹脂が繊維に隙間なくコーティング出来る様にする処理) のレベルが低く、結果、ドリルで繊維が切りにくくなっているものです( ハサミで凧糸の様な柔らかい糸を切ると繊維がばらけるばかりでなかなか思う様に切れませんがこ れに近い感覚と思って下さい)。
次に考えられるのがドリルの刃先の状態が悪く切れ味が悪い事です (こちらも凧糸の例で考えると、 切れ味の悪いハサミでは繊維がハサミの刃に押され刃と刃の隙間に入り込み、 繊維がバラけるばかりで切れない状態になりますがこれに似た状態です)、その他、ドリルの送りや回転数の設定が良く無い事( これらは工場の管理基準・ 作業基準が品質より生産性優先となっている事に起因するものと考えられます)等が問題で起っている可能性が有ります、 自社の基板で出荷後に市場クレームとしてスルーホール部での断線が頻発する様であれば、 このあたりを疑ってベアボードの段階でスルーホール内壁の状態に注目してみて 下さい。
ちなみに、 ドリルの刃は各基板メーカー毎に管理基準が異なりますが、 或る程度のHIT数で研磨に出される為(通常3~ 5回程穴開けでの使用と研磨を繰り返します=研磨と研磨の間のHIT数もメーカー毎に異なりますが、 例えば1回目の研磨までのHIT数が2,500HITなら2回目は2,000HIT、 3回目は1,800HIT・・・と累積の研磨回数が増える毎に研磨頻度が上がります)、 研磨直前と累積の研磨回数が多くなった場合には刃先の切れは徐々に悪化する為、 繰り返し製造されている同じ基板でも、 製品投入のタイミングによっては穴壁の仕上がりは異なり切れが鈍 ってきたタイミングで投入されると、仕上がりが悪くなってしまいます。( もちろん各メーカーとも異口同音に品質に影響が出る前には研磨していると言うで しょうが・・・?)
以上、元々構造的に弱いスルーホール部の長期信頼性ですが、 材料やプロセスに問題が有ると、更にその信頼性を低下させてしまいます、 まずはそれらを意識的にチェックする事から始めてみてはいかがでしょうか。
しかしながら、これは言葉で言う程簡単では無く、
このあたりの出来映えは、レベラー品以外であれば、
その結果凹凸が余りに顕著な場合、
次に考えられるのがドリルの刃先の状態が悪く切れ味が悪い事です
ちなみに、
以上、元々構造的に弱いスルーホール部の長期信頼性ですが、