省エネ・長寿命製品のつくり方

あかりを楽しむ 第3回 心地よいあかり 2014年04月25日

居住空間における照明の役割とは何か。

それは、「心地よさ」を与えてくれることです。
もちろん人や物、空間を照らすことが第一ですが、それだけでは完結しません。

 一般的な照明は天井からの直接光で室内の隅々まで照らしますが、それだけでは物を見えやすくするだけです。
あかりはその場所にいる人の心に影響を与え、心理的・生理的な効果をもたらす力を持っています。

自然界ではみなさんもブルーモーメント(夜明け直前か日没直後の澄みきった快晴の空)をみて、その美しさに感動を覚えたことはありませんか。
そのような光景を照明で再現することは難しいのですが、私たちが生きていくために必要な水と空気、それに生活のリズムを保つ太陽の光は欠かすことができません。照明も同様に昼光から夜になると暖かなオレンジ色の明かりがその代わりとなります。

 ヨーロッパ諸国では現在に至るまで「Comfort(心地よさ)」を第一に考えて照明器具を配置します。壁面や天井、床を照らす柔らかな間接照明の光で眩しさを排除し、光と同時に影をつくり出すコントラストは空間全体に立体感や奥行きが広がり、微妙な光と陰で表現する陰影の美しさに触れることで、豊かな気持ちに導かれるのです。

みなさんにひとつだけ意識していただきたいことがあります。それは、あかりに対して美意識をもつことです。

日本も江戸時代は蝋燭(ロウソク)や行灯(あんどん)が主体でした。日本人が暗闇の中に灯る炎の灯りと陰影に包まれて生活してきた文化と歴史は静寂な雰囲気を醸しだす灯りだったのですが、現代では世界で一番明るさを求める社会に成長しました。
江戸時代の生活に遡りましょうとは言いえませんが、照明の役割、存在を見つめ直すことで「あかりの本質」が見えてきます。

 照明で空間全体を明るくする必要はありません。必要な場所に必要な光を照らす間接光や部分照明があれば、それだけで心地よい安心感が生まれます。
たとえば、床に置くフロアスタンド、机上のデスクスタンドなどの透過光・反射光は柔らかな光のグラデーションとメリハリのある陰影となり、空間全体が光の装置として私たちの心を包み込みます。

キャンドル3.jpg

 まずは手軽に体験できる明かりの原点、キャンドルの炎を楽しんでみませんか。炎のゆらぎはとても神秘的で癒しの効果はもちろんですが、燃焼することによる消臭効果やマイナスイオンの放出量も多いとも言われています。

 実は、光源の強さを表す単位とされるカンデラ(Candela)は「ロウソク」のキャンドル(Candle)が語源のようです。つまり、1カンデラはロウソク1本分の灯りと同じで、とても意味深い光なのです。

 現在、新建築の主照明は白熱電球や蛍光灯からLED照明に取って代わろうとしてしています。
省エネ性能と快適性を両立できるこはとても良いことだと思いますが、空間の隅々までを明るく照らす必要はありません。これまでのようなあかりの使い方で本当に良かったのか。少しだけでも考え方を改める必要があります。

みなさんも本来のあかりの美くしさ、心地よいあかりを体感しましょう。